「若宮公貴さんは今朝がた、ようやく意識を取り戻したようです」

今私はある部屋の中で、透明の板越しにスーツの男性と対面している。

彼はなんでも、お母さんが雇った私の「弁護士」らしい。

「ただ、頭部に傷跡は残ってしまいますし、これから後遺症が出てくる可能性もあります。また、退院して無事仕事に復帰するまでにはそれなりの期間を要し、働き盛りの男性の社会生活を妨害することになってしまう訳ですから、その補償がなかなか大変であると思います」

「でも、彼はひとまず助かったんですよね」

「ええ」

「だったら良かった…」

死ななかったんだから、私はそこまで重い罪にはならないだろう。

そもそも、もう二度と副社長に会えなくなってしまったらとても悲しいもの。

そこで不意に気が付く。

そうか。
私の罪を重くしない為にも、彼はとっさに本丸さんを庇ったのね。

男性の方が、女性より体力も気力も勝っているから。

万が一私が極刑や、無期懲役なんかになってしまったら会えなくなってしまうと危惧し、とっさにあんな行動を…。

つまり彼もまるっきり私と同じ気持ということだ。


「示談には応じてくれそうにはありませんし、正直、かなり厳しい状況ではあります。しかし、出来うる限り外田さんのお力になれるよう頑張りますので」

「ええ。そうして下さい」


お母さんからお金をもらっているんだから当然よね。

ああ、でも、今すぐ彼の元に飛んでいく訳にはいかないのか…。

なんだかすごく歯痒い。

弁護士はその後も何やら話をしていたけれど、適当に相槌を打ちつつ私は自分の世界に入った。

こんな事になってしまったのは、私が臆病だったから。

副社長からのアプローチに、もっと早い段階で応えてあげていれば、こんな風に拗れたりはしなかった。

本当にごめんなさい…。

ここを出たら、今度こそ素直になる。

あなたの元に真っ先に駆けて行くわ。

だって居場所は分かっているんだから。


……ううん。

たとえどこにいても、何をしていても、必ず探し出す。
私達は必ず出会える。

だって二人は赤い糸で結ばれた運命の相手なんだもの。

だからどうか諦めないで。

私と再会できる日まで、決して挫けず、心弾ませながら待っていてね。

約束よ、公貴さん…。