「其の花の、真白に咲く」〜麗しの執事と令嬢の秘恋〜

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ーー馬車に揺られる中で、

ガタンと大きく車体が傾いだ拍子に、ふと横に座る彼の手に触れた。

触れ合う互いの手に、彼は一瞬驚いたように私を見つめて、

それから、僅かな間を置いて、手を引こうとした。

離れる感触に、思わず彼の手を引き戻そうとするのに、

リュートが何も言わずに、ふっと上から乗せるようにして、私の手にその手を重ねた。

「……えっ」

予期せぬ彼の行動に、私の方が今度は目を見張ると、

「……少しの間だけ、どうかこのままで……」

前を見据えたままで、リュートは口にして、

重なり合う手が熱く、熱を持つようだった……。



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