略奪連鎖
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 孝之と初めてキスをしたのはそれから3ヶ月が過ぎた頃だった。

 12月から1月中旬までは繁忙期でもあり、職場で顔をあわせても挨拶くらいしか出来なかった。それでも休みが合えば食事程度は出掛けていたけれど、なかなかキスに至らずもどかしく感じていた。

「彼女ときちんとする」孝之が言ったその言葉を素直に信じてもいいのだろうか。もしかしたらこのまま有耶無耶になるんじゃないか。不安が募り始めた頃、ようやく仕事が落ち着き2連休をもらうことが出来た。

 休みの前夜、孝之から部屋に招かれた。

 前回とは違い、この日は玄関先で待たされることはなく、部屋に足を踏み入れるとベッドが新調されていた。

「これ……」と目を瞬かせる私を背後から抱きすくめた孝之は「待たせてごめんね」と耳元で囁いた。

 え、と振り返った私は「……別れたんですか」

 驚きに声が震えていた。

 うん、と孝之が頷き「塔子」と愛しむような優しい声で私の名前を口にした。

 一瞬にして涙の薄膜が瞳を覆う。肩先が震える私を胸に抱いた孝之は「好きだよ」とゆっくりと唇を重ねた。

 翌朝目覚めると裸で眠る孝之が隣にいて、夢じゃなかったんだと幸福感に全身が包まれた。朝方近くまで何度もキスをかわしたのにもう口付けたくなる。

 寝息をたてる彼にそっとキスをした。

 まだ眠たげな瞼を持ち上げた孝之が小さく笑って私を抱き寄せる。塔子、と頭上で声がした。

「塔子の歯ブラシとかパジャマとか、そういうの買いに行こう」

 孝之と初めて迎えた朝。

 少しだけくすぐったくて、幸せに満ちた甘い朝だった。
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