Perverse second

episode 3




「三崎さんに気持ちを伝えたよ」



営業に出る前、エレベーターで一緒になった津田さんから、唐突にそう聞かされた。



「家まで送った時に言ってませんでした?」



「あの時は柴垣が帰って来て中途半端になってしまったからね。もう1度ちゃんと伝えたくてさ」



「そうですか…」



そんな報告、俺にしてくんじゃねぇよ。



心の中でツッコミながら、完全なる無表情を貫いた。



「返事、気になる?」



答えるつもりもないくせに笑顔で問うあたり、完全に俺を意識しているのは明らかだ。



「気になりませんよ。俺には関係ないんで」



「そか」



「はい」



扉が開くと、



「じゃ、今日も一日頑張ろう」



爽やかにそう言って津田さんは、時計を確認しながら早足で出て行った。



津田さんのことだから、きっと真っ直ぐに思いの丈を伝えたんだろう。



三崎の気持ちを尊重して、優しい笑顔を浮かべながら甘い言葉を発したに違いない。



気になるかって?



気にならねぇわけねぇだろう。
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