初夏の訪れを感じさせる強い日射しが地上に降り注ぐ五月。
GWが終わって十日ほど経ったこの日、朝から爽やかな快晴に恵まれた。
午後半日休暇を取得した私は、午前中の勤務を終えると、東京・丸の内の一角にあるオフィスビルから、急いで飛び出した。


東京駅から丸の内線に乗り、降り立った駅は霞が関。
階段を駆け上がり地上に出ると、どこか物々しい官公庁街が視界いっぱいに広がった。


私が普段勤務するオフィス街とは、また全然違った空気が漂う街。
行き交うスーツ姿の男性も女性も、みんな国家公務員……官僚に政治家もいるかもしれないと思うと、妙に気が引き締まるから不思議。
それでも怯まず、私が急ぎ足で向かったのは、東京高等裁判所。
とある企業裁判の控訴審を傍聴するのが目的だった。


高等・地方・簡易裁判所からなる合同庁舎は、大小百五十以上の法廷を有しているそうだ。
国内はもちろん、世界でもトップクラスの規模を誇る司法機関。
私が目的にして来た裁判は、午後三時に開廷した。


とある中小企業が、国内最大手の電機メーカーを相手取って起こした、特許侵害訴訟だ。
一般に、大企業を訴えても、中小企業が勝訴できる確率は三パーセントにも満たないと聞いたことがある。
四月に行われた第一審では、大方の予想通り原告敗訴の判決が下された。
ところが、原告側は果敢にも控訴した。