外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
私は彼の視線を浴びながら、バッグから折り畳みの傘を取り出す。


「相合傘、できるね」


短い言葉で答えた私に奏介が目を丸くした時、エレベーターは地上に着いた。
スッと音もなくドアが両側に開く。
先に立って歩く私を、奏介が少し弾むような足取りで追ってきた。


「七瀬、結構な雨脚だぞ。折り畳みの傘は小さいから、俺を入れたら七瀬が濡れる。いっそタクシーで……」

「二人とも濡れないように、こうすればいい」


エントランスを突っ切って、正面玄関から外に出る。
玄関ポーチで傘を開き、私は奏介の腕を取ってギュッと胸に抱きしめた。
奏介がギョッとして息をのむのも構わず、二人がすっぽり収まるように傘を傾ける。


「オフィス街で、くっついて歩く言い訳にできるじゃない?」


ね?というように首を傾げ、微笑みかけると、奏介は虚を衝かれたように何度か瞬きをした。
そしてすぐに、「はは」と小さな笑い声を漏らして苦笑する。


「おかしいな。君は照れ屋のはずなのに。こういうのは、俺が仕掛けないとできないと思っていた」


どこかからかうように言いながら、私の手から傘を取って持ってくれた。
彼の言う通り、本当は、誰かに見られたらちょっと恥ずかしいな、と思っていたけれど。
私は黙って、彼の腕を抱く腕に力を込めた。
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