外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「昨夜は、本当に楽しみにしてたんだ。やっと……新婚らしく、七瀬といちゃいちゃできるって」

「っ……!」


ふて腐れているのか、ストレートすぎる奏介の言葉に、私の胸の鼓動が大きく跳ね上がる。
心臓が拍動して、身体も顔も熱く火照るのを感じた。


「そ、奏介」

「あ~、くそっ。兄貴のヤツ……。本当に腹立たしい」


昨日、法廷でキリッとした顔で、朗々と弁論していた人と同一人物だと思えないくらい、ちょっと乱暴な言葉を放ち、奏介はガシガシと頭を掻いた。
そうやって、自分の中で苛立ちを鎮めたのか、はあっと声に出して大きな溜め息を吐く。
そして、ゆっくりと私に顔を向けた。


「仕方ない。楽しみは、今夜に持ち越し。……もちろん、いいだろ?」


私の心を探るように、切れ長の目をさらに細める。
その言葉の内容も、彼から漂う空気も、朝っぱらからやけに妖艶で、私は高鳴る胸に手を置き、ただ何度も頷くだけの返事をした。
それを見て、奏介は満足げに微笑む。


「茶会。あまり気を張って疲れないでくれよ。夜まで体力温存しておけ」


信号が青に変わったタイミングでそんな不敵な言葉を言いのけ、奏介はぐんとアクセルを踏み込んだ。
休日の早朝、都心の道路は空いている。
少し機嫌が直ったのか、奏介は気持ちよさそうにハンドルを操る。
その横で、私は真っ赤に染まった頬に手を当て、熱を冷ますのに必死だった。
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