外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
周防家の大寄せ茶会の初日。
つまり、奏介が代理人を務める上告審の初日。
前日の夜に、


『裁判は午後一時開廷なんだが、初日なので朝から裁判所に詰める予定だ。七瀬の大寄せデビューを見届けられずに申し訳ないが、頑張ってくれ』


と電話をくれた奏介が、お茶会開始から一時間経った午前十時に、血相を変えて周防家にやってきた。
その時間、すでに当主はお茶室に入っていて、藤悟さんのお茶席を前に、一般のお客さんが続々と来場し始めたところだった。


午前中、私は、受付係をすることになっていた。
着物姿というのが慣れないけれど、私は受付のプロだ。
むしろ、午後にお願いされているお運びさんの方が緊張して荷が重い。


なので、受付ならそれなりに気楽。
庭先に設営されたテントの下でお客様の対応していた時、受付待ちの列の後方から、「七瀬!」と、どこか切羽詰まった声が聞こえた。


「え?」


ここで今、聞くはずがない、奏介の声。
聞き違いかと思いながら顔を上げると、混雑し始めたお客様の間を縫うようにして、ビシッとスーツ姿の奏介が私の視界に飛び込んできた。


奏介の声色のせいか、その場にいたお客様が、みんな彼に注目する。
彼が周防家の次男だと見知っているのか、にわかに色めき立つ人もちらほらいた。
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