外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
お義母さんは困った様子で呟いた後、両腕の上に掛けて、広げた着物を見せてくれた。
私は思わず「うわあ……」と感嘆の声を漏らしてしまう。


茶道どころか日本文化に疎い私には、その着物がなんという柄か、どれだけ価値があるかもわからない。
だけど、広げて見ると絵柄が一枚の屏風のように繋がっていて、なんとも豪華で華やかな着物だ。


「素敵な着物……」


私の反応に、お義母さんはどこか嬉しそうに笑う。


「私が周防に嫁いだ後、他の茶会に行く時のために作ったものなの。絵羽模様という伝統的な絵柄よ」

「訪問着……ということですか?」


お義母さんは私の腕に着物を移してくれながら、何度か頷き返した。


「ちゃんと周防の一つ紋も入っているし、これは七瀬さんに差し上げるわ」

「えっ……! こんな立派な着物を?」


ギョッとして腰を引かせながら聞き返すと、彼女はニッコリと微笑む。


「ええ。七瀬さんは家元の妻じゃないから、うちでお手伝いしてもらう時でも、無地の染め抜き紋を着てもらう必要はないし」


お義母さんは流暢に答えてくれたけれど、そこに出てくる言葉の意味も、どんな着物なのかも私にはちんぷんかんぷん。


「あ、ありがとうございます!」


着物のお礼を元気に言ったものの、こんなところでも周防家の格式高さを思い知ってしまった。
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