外ではクールな弁護士も家では新妻といちゃいちゃしたい
「も、もう」


頬がカアッと火照り上気するのを意識して、私は奏介から目を逸らし、膝の上のバッグに視線を落とした。
車の中じゃなかったら。
奏介が運転中じゃなかったら。
抱きついてしまいたいくらい嬉しかった。


有能な弁護士で、カッコよくて優しくて、頼もしくて。
なによりも、いつも包み込むように私を愛してくれる。
私にはもったいないくらいパーフェクトな旦那様だからこそ、私も彼のために頑張りたい。


「……大好き」


唇の先で、ボソッと呟いた独り言。
私にもはっきり聞こえないくらい小さな声だったから、もちろん奏介の耳にも届かなかっただろう。
まっすぐにフロントガラスの向こうを見据えるその横顔を、ちょっとくすぐったい気分で見遣り、そっと目を伏せた。


ところが、その夜――。
今朝、奏介に『体力温存しておけ』と言われたのに、ベッドに入った私は、自分でも驚くくらい疲れ果てていて……。


「ちょっ……七瀬! 七瀬、頼むから起きろ、起きてくれ! ……マジでか……」


奏介の悲壮な声にも目を開けることもできないまま、睡魔に引き摺り込まれ、朝までぐっすり眠ってしまったのだった。
こうして、私と奏介の結婚初夜は、二度目の順延。


……ごめんなさい、奏介。
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