イジワル上司にまるごと愛されてます
第五章 嘘つきな唇
 翌月曜日、来海が出社すると、柊哉はすでに課長席に座っていた。

「おはようございます」

 来海の挨拶に、先に出社していた社員たちが「おはよう」「おはようございます」と応えるなか、柊哉は不機嫌そうに来海を見た。

「おはよう」

(わ……やっぱり怒ってる……か)

 メッセージ一つだけ送って彼を置いて帰ったことを申し訳なく思う反面、これで彼に振り回されずにすむようになるかもしれない、という少しの安堵も湧いてくる。

 とはいえ、そんな不安定な状況でも、やはり同じ部署で、席もすぐ近くだ。

(ぎくしゃくした関係だと……仕事がやりにくいな)

 来海は柊哉の方を意識しないようにしながら、パソコンを立ち上げて、取引先からのメールのチェックを始めた。メールの送り主は南アフリカやモロッコ、インドやミャンマーのメーカーや手工業組合だ。それらを全部開封したが、先週の金曜日に東南アジアの手工業グループから来るはずだったメールは、まだ届いていなかった。柊哉の歓迎会に開始ギリギリの時刻に到着してしまったのは、そのメールを待っていたからなのだが……。
< 78 / 175 >

この作品をシェア

pagetop