異邦人
異邦人

大手物流企業へ就職した俺は、輸出の通関手続きを行う部門に配属された。
その後、彼女の在籍する輸出乙仲部門と合同で歓迎会を催されることになり、その時、初めて彼女と言葉を交わすことになった。

俺は、入口のすぐ手前にある席で、通関部門の男性陣と固まって座っていた。通関部門は25~35歳の若い男性社員が多く、知的で落ち着いた雰囲気があった。

例えば、俺の隣に座る25歳の彼、内田君は、真面目で優しい人ではあるが、率先して前に出るタイプではないため彼と話していていると時々会話が途切れ気まずい思いを何度かした。俺の目の前に座る27歳の彼、佐藤くんも冗談を言ったりするが、会話を続ける気がないのか俺が笑ったらすぐにおしまいになってしまう。そういう俺は俺で、この中でも一番の年下な訳で気を遣い過ぎてしまい、受身になりがちだ。こういう時に気の利いたことを言って場を盛り上げられたら自分を最高だと思えるのにどうもまだこの環境に慣れないのだった。

しかし、俺たちのいる微妙に静まり返った空間以外の席では大分盛り上がっているようだった。時々、奥側の席に集う年配方の笑い声がこちらまで聞こえてきた。生温かい狂喜という名の突風が通り過ぎるたび、如何にしてこの寂しい場に居心地の悪さと気まずさを増して去ってしまうのかと思うと少しの羞恥心と苛立ちを感じさせた。

もう、まもなくして入口から一人の女性が現れた。ブロンドの長い髪を靡かせながら颯爽と俺の横を通り過ぎるとそのまま上司たちに向かって挨拶をした。

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