異邦人

「お疲れ」そう声をかけられ振り向くと木原さんがそこにいた。いつかの時のように税関から戻ってくるとコンビニから出てきた木原さんに声をかけられた。
「お疲れ様です」俺はそう応えたが彼女と目を合わすのは気まずいと思った。
「なんか良い事あった?」と聞かれて俺は思わず「え?」と反応した。
「なんもないっすよ」と応えると「なぁんだ。彼女が出来たのかと思ったのに」と笑いながら言われた。俺と橋本との間に何があったのか木原さんは知っているのだろうかと少し不安になった。
「彼女なんて出来てないですよ。そういう木原さんこそ嬉しいことでもあったんですか?」
「まぁね」
「え!?もしかしてプロポーズでも受けたんですか!?」
「は!?私がその程度で喜ぶと思う?」
「その程度って・・・」
「違うわよ」そう言うと彼女は意を決したかのように一旦大きく息を吐くと「はい」と言って俺に何かを渡してきた。
「なんですか?これ」
「手紙」
「え?手紙?自分にですか?に、してもかなり分厚いですね」
「まぁ、自分の思いの丈をぶちまけたからね」
 「なんか凄まじいっすね。ラブレターですか?」
「まさか。でも告白文だよ」
「告白文?」
「実は私、今日で仕事辞めるの」
「え!?」
突然の告白に俺は一瞬何を言われてるのか分からなくなった。
「辞めるって、聞いてないですよ!なんで突然」
「実は秘密裏に前々から決まってたことなの。私、この仕事辞めるわ」
「そんな突然・・・」
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