ツンデレ黒王子のわんこ姫

結納

翌日、顔合わせという名の結納は、都内の有名日本料理店で行われた。

父親同士が以前からの知人であったため、仲人を立てない略式の結納である。

結納が交わされて初めて"婚約"と称されるらしいので、この一年、芽以は大学の友人にも、職場の同期にも『婚約者がいる』と明言してこなかった。

そもそも素性も顔も教えてもらえなかったので、芽以には"黒田の息子"なる者が存在することすら信じがたかった。

芽以は、昨日初めて顔を合わせた、向かい側に座る黒田健琉をまじまじと見た。

"ハゲ面のおじさんじゃなくて良かった"

いくら父親の薦めでも、譲れない芽以のラインというものがあった。

だからといって、父親の言いつけを破る気力はないのだが、絶対に恋愛結婚はできないのだから、せめて好みのタイプであってほしい、とは願っていた。

健琉の第一印象は、毒舌で俺様だけどツンデレの王子さま。

見れば見るほどカッコいい、たとえ彼が男色であっても,,,優しい一面が有れば連れ添うことができると思った。

「これにて、黒田家次男の健琉と白木家長女の芽以さんの婚約が滞りなく成立したことを宣言致します。」

結納品の交換が終わると、健琉の父・黒田総司が高らかに宣言した。

黒田家からの結納品に対して、白木家は、剣士が所有していた幕末の名刀を黒田家に贈った。

刀を所持するには、都道府県に届け出て、銃砲刀剣類所持登録証を受け取る必要がある。

白木剣士はすでにその手続きも済ませていると述べた。

黒田は波紋が美しいと評されるその刀を、黒田家の家宝にすると言って喜んだ。

仲居が、美味しそうな料理を運び終わった所で、食事が開始された。

「健琉くんは剣道をするんだってね。」

「はい、今は仕事が忙しいので練習できていませんが、剣道は五段です。」

父親の幕末好きのせいで、健琉は幼い頃から剣道を習わされていた。

「ほう、居合や抜刀をやる気はないのかね?」

「機会があれば是非。ただ、僕よりも父の方が興味ありそうです」

ハハハ、と場が和んだ。

「それより、昨日から健琉君のところで芽以が働き始めただろう?迷惑をかけてはいないかな?」

「いえ、教育的な視点からも商品に対して適切なアドバイスを頂いてますよ。とても真面目な勤務態度で感心しております」

健琉の紳士的な態度に、芽以の両親はすっかり安心した様子を見せている。

「幼稚園から女子校に通い、芽以は、少し世間知らずのところがある。芽以をよろしく頼んだよ。」

「はい」

その後は、和やかに食事をしながら、主に両家の両親の親睦がはかられていった。
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