男装したら数日でバレて、国王陛下に溺愛されています
第三章 懸念と後悔と溺愛


いつもよりもミシェルは早く起きて支度を済ませていた。

そしてアベルがやって来る時間になる少し前に廊下に出て待った。
 
隣の部屋の扉が開き、いつものようにビシッと藍色の侍従服を着たアベルが姿を見せる。

ミシェルの姿にアベルは驚く。


「フランツ、大丈夫なのかい?」

「はい。もう平気です」

「それでは行こう」


アベルと共に国王の私室へ向かうミシェルは緊張していた。


(クロードが陛下だということは忘れるのよ)
 

馬の背で力強い腕で守られるように走らせたクロードがずっと頭から離れられないのだが。

いつものようにクロードは起きており、アベルの後ろに現れたミシェルをちらりと見ただけで、手にしていた書類に目を落とす。
 
アベルはお茶を淹れ始め、ミシェルはそれを見つめていた。


「僕が持って行っていいですか?」

「……病み上がりだが、大丈夫かい?」

「はい」


ミシェルはお茶を持って行った時に、自分は女なのだと告白しようと決めていた。


「では頼むよ」
 

緊張はしていたが、町でクロードの一面を見ているせいか、ちゃんと話せそうだ。
 
ミシェルはお茶を運び、丁寧にクロードの前に置く。



< 103 / 272 >

この作品をシェア

pagetop