「だからお前は副社長につけばいいっていつも言ってるだろ?」
そんな事をしないとわかっている様な和也の口ぶりに、智樹は大きなため息をついた。

「俺だってそろそろ嫁が欲しいんだよ。家庭がね。いつまでもお前について世界中点々とする生活じゃなくな」
智樹も自分のデスクに向かうと、書類やメールを和也に送り付けた。

「このメールはお前でやっておいて」
その内容を確認しつつ、和也は智樹に言うと立ち上がった。

「はいはい。わかりましたよ」
いつものことだと言わんばかりに答えた智樹を、和也はチラリとみるとキュッとネクタイを締めた。

「行ってくる」
普通にホテルの夜勤に向かう和也に、智樹は諦めたように小さく手を振った。

和也とて、小さいころから知っていて、ずっと自分についてくれている智樹の幸せを願わないわけではなかったが、和也はどうしても本社に入りただ指示をするだけの仕事ではなく、生の現場をみて仕事がしたかった。