天罰

9

大江戸温泉を後にすると私達は手を繋ぎながらお台場にあるホテルへと目指した。

一歩一歩ホテルに近づくたび罪の重さが大きくなっていく気がした。
もう戻れない。戻ることなんて出来ない。
今の私には「待った」と言う勇気も
彼から離れたいという気持ちもなかった。

迷いがない訳ではない。けれど
どうか今日1日が夢であって欲しいと思った。

「なんか緊張してきますね」
「うん・・・」
「え?桃さんもですか?」
意外とでも言うかのように彼は私の方を見て笑った。

「桃さんって既婚者じゃなければこういうのに慣れてそうなのに・・・」
「それどういう意味?」
彼の心外な言葉に私はキレそうになった。
私の声のトーンが低くなったのを彼は察知したのか
フォローするかのように「え、いや、その。桃さんってモテそうだから
その色んな男性と経験してるのかなって・・・」と答えた。

「は!?私が軽い女だって言いたいの!?」
私は彼と繋いでいた手を思いっきり離した。
その行動に彼は焦って「すいません!そういう意味じゃ・・・。
ただモテモテだったと兄から聞いたことあったんで
色んな男性と付き合ったことあるんじゃないかと思って、その・・・」と言った。

彼に背を向けた私に彼は「すいません、本当にそんなつもりじゃないです!
ごめんなさい、桃さん!」と
私を宥めるように必死に謝った。
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