〜starting over〜
高校に入学してからずっと、女の子の影が見え隠れする都度注意をしてきたのに。
真輝も、最初の内は本当に反省してくれてた。
その悲壮感に、私もつい許してしまった。

『私が1番』だという言葉を信じて。

だけど、人は慣れると図太くなるもの。
繰り返される浮気は、いつしか日常の風景となり。
いつしか、私の燻る思いを訴えても真輝に届かなくなった。
代わりに、私が身につけたものは、虚栄心。
私だけが『彼女』だという真輝の言葉だけが、私の盾となった。
あえて身体の関係がないのは、『特別』だからなのだとすり替えて、弱い自分を隠すようになった。
それが、当たり前のように漫然とした日々を過ごすうちに、なんとなく気付き始める。
私達は、最初の頃のようには戻れないのだと―――。
それでも、解けそうな糸を必死に繋いで現実から目を逸らしてた。
少女漫画のように、いつか完全な2人になれるための試練なんだ、とか。
いつかきっと、目を覚まして恋を始めた頃の私達に戻れるんだ、とか思い込むようにしてた。
戻れる道なんか、とっくに塞がってたのにね。
だからもう、現実を見なくっちゃ。

「最後が、よりによって玲奈って……」
「杏……」
「でも、もう真輝が誰とどうなろうと関係ないわ。さようなら」

茫然とする真輝を残して、私はまた走り出した。
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