〜starting over〜
失うものが多すぎる。
彼氏と親友の裏切り。
真輝は兎も角、玲奈の事は本当に、本当に信じてた。
私が真輝の浮気で悩まされてる事も、傷ついてる胸の内も話してきた。
苦しみも、悲しみも、包み隠さず話せたのは、保育園の時からずっと一緒で友達でもあり家族みたいな存在だったから。
そんな玲奈が、どうして傷に塩を塗るような真似をしたんだろう。
現実を目の当たりにしても、未だに信じられない。
玲奈に、裏切られただなんて……。

足をとめ、俯いた視線の先には、白い上履きがあった。
あ。
靴、履き替えてくるの忘れちゃった。
家に帰ったらすぐコレ洗わないと乾かないな。
明日、学校に間に合わない……。
暗く重い気持ちが胸にのしかかる。
私達が別れた事、既に学校中に広まってるかもしれない。
これからは、2真輝の事で嫌な思いはしなくて済むんだ。
これでやっと、平穏な生活を送れるようになる。
学校……行きたくないな~。
玲奈と顔を合わせるのもキツイ。
クラス一緒だから、嫌でも毎日顔を合わせなきゃいけないし。
人の噂も七十五日。
どんな噂も一時的な事に過ぎず、75日も経てば忘れ去られていく、とは言うけど。
何かにつけて、まだ暫くは私達の破局話で賑わいそうな気もする。
クラスメイトの性格解ってるから、今更友達になる気も失せる。
信頼できる人も居ない。
結局、私には何もなかった。
寧ろマイナスだらけ。

足取りは重いけど、不思議と涙は出てこなかった。
ただ、ちょっと疲れたな、て。
日課になっていた、
『今、誰と居るの?』
『何処で何をしてるの?』
そんな束縛や猜疑心に苛まされる事もなくなる。
変な意地やプライドと葛藤せずに済むんだと思うと、妙な脱力感。
それとも、これを開放感と言うのかな。
そうこう考えてるうちに、行き場所もない私は、結局家に帰ってきてしまった。

「どうしたの、こんな時間に。学校は?」

玄関先でお母さんと遭遇してしまった。
これは、想定外だわ。

「ちょっと……具合悪くて帰ってきちゃった」
「あら、熱は?」

手ぶらな上に上履き姿の私を見て、訝し気な顔をした。
ヤバイ。
何か突っ込まれる前に、話題を変える。
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