〜starting over〜
それが可笑しくて、笑ってしまった。

「俺を何だと思ったんだよ?」
「大学生」
「はぁ?」

呆れ顔が可笑しくって、また笑った。
お陰で、グツグツ燻る負の感情は、ゆっくり鳴りを潜めていく。
だから、私もそれが無かったかのように胸の奥に沈める。
そのまま笑顔を張り付けて、色々質問してみた。
親戚とはいえ、私達今日が初対面で、湊さんの事何も知らないんだよね。
これからお世話になる人の事、少しは情報収集しておかないと。

片平湊(かたひら みなと)さん。
年は、なんと28歳!
童顔だ。
職業、会社員。
現在、恋人無し。
都内一人暮らし。
(特技、不機嫌顔!?)

湊さんの年齢にも吃驚だけど、私がこれか途中から向かうのは東京!
そこからわざわざ何時間もかけて私を迎えに来てくれたんだって。
どうしよう……。
私、めっちゃTシャツとジャージだ。
車の中だからまだいいけど、年頃女子としては気持ち的に恥ずかしい。
途中、ファミレスに寄って夕食を済ませて、また慌ただしく車で出発。
さっき食事中に電話がかかってきて、不機嫌ボイスで「悪い。後2時間ほど遅れる。帰ったらすぐ戻る」て言ってたから、私の所為で仕事にロスがでてるようで心苦しい。
それでも、私は湊さんについてくしかないから、極力邪魔にならないようにしなきゃ。

昨日殆ど寝てなかった所為か、、午後眠っただけでは足りなくて、うとうと。
今日、色々あったから精神的に疲れてるのかも。
本当に、色々あった。
ありすぎて、涙も出てこない。
ただ、やたら眠い。
そういえば、親戚のお姉さんが出産した時に言ってたな。
分娩室で陣痛の波にさらされる中、ひどく睡魔に襲われたって。
後日、助産師さんに聞いたら、人の身体は激痛から逃げようと睡眠という手段で自分を守るらしい。
精神的ダメージの大きい私も……なんて。
一緒にしたらダメか。
て、自嘲してたら、そこで意識は途切れた。
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