イジメ返し3
扉の隙間から中を伺いながら声をかけるタイミングを失ってしまったあたしに母が気付いた。

母はあたしの存在に気付くなり、鬼の様な形相を浮かべて顎で扉をさした。

母は時折、あごであたしに指示を出す。

出ていけという母の無言の合図に気付き、音を立てないようにそっと扉を閉める。

心臓がバクバクと震えていた。

見てはいけないものを見てしまったような気がして、体中に嫌悪感が沸き上がる。

男の人が帰ると、母はあたしの髪を掴んで部屋の中を引きずり回した。

ものすごい痛みが脳天に走る。

必死になって歯を食いしばって耐えるあたしの髪を母がいきなり離した。

そのせいで体は滑り、背中をテレビ台に強打した。

『うっ……!!』

あまりの痛みに体を芋虫のように丸めて声を漏らすあたしの頭を母が叩く。

『入ってこないでって言ったのに、どうして約束を破ったの!?』

『やめてよ、ママ!痛いよ!!』

『うるさい!約束を破る悪い子にはお仕置きが必要ね!!』

母はそう言うと、あたしのお腹をギュッと指の腹でつねった。

『痛いよ……!』

『アンタが悪いの!』

母は何度も何度もお腹をつねる。

見る見る間に赤くなっていく腹部。強くつねられた部分は内出血を起こして赤紫色に変色している。

母は外から見えない部分だけを執拗に攻撃した。

あの頃はまだ幼すぎて母がしていた行為の意味やどうしてここまで母が怒り狂うのかがわからなかった。
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