敏腕メイドと秘密の契約

僕らの過去

副社長になった天音が一番最初に行ったこと。

それは、幹部職員、しかも専務以上にしか認められていない機密文書をみることだ。

会社の機密ではない。

取引先、契約先の機密リストだ。

そのリストの中に、

"三浦HS"の名前を見つけた。

「ビンゴ!」

どれ程この瞬間を待ち望んでいたことだろう。

倉本SEは、息子の天音が言うのもなんだが、
システムエンジニアリング業界においては最大手、一部上場企業だ。

三浦HSからも間違いなくVIPと認定されているだろうと予測をつけていた。

そのためにこの会社を就職先に選んだと言っても過言ではない。

社員として実力を認められ課長にはなった。

しかし、
専務以上の幹部でなければ、三浦HSに接触すること、いや、情報を得ることすらも許されない。

松山とは随分、意味合いが異なるが、
ある意味、専務以上の幹部になることを、天音も虎視眈々と狙っていたといえる。

これを期に、
運良く契約を結ぶことができれば、三浦HSを通じて"三浦藍"に再会できるかもしれない。

天音の胸はこの10年間で一番高鳴っていた。

そして、幸運を手にした天音に更なる追い風が吹いてくる。

会社の状況を危ぶんだ社長である父が、三浦HSに相談を持ちかけてみると言ったのだ。
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