極甘同棲~エリート同期の独占欲を煽ってしまいました
第七章/Hypnotic Poison
泣き明かして腫れたまぶたに、いつもより濃くアイラインを引いた。引き締め色のブラウン系のアイシャドーをグラデーションで入れる。
ビューラーでまつげを上げて、丁寧にマスカラを塗れば、なんとかごまかせたと自分の目には見えた。

彬良くんは努めて普段通りに接してくれるのだけど、わたしは情けないことに立っているのが精一杯といった状態で。

その日が金曜日だったのは幸いだった。ほとんど気力だけで1日の勤務を終えて、よろめく足を踏みしめるように家に帰りついた。
もうだめ・・・
ドサッと、自分のベッドに倒れこんで、そのまま気絶するように意識を失ってしまった。

ふと気がついたら、真夜中だった。
家の中はしんとしてる。彬良くんもとっくに帰宅して寝ている時間だろう。
あぁ、とベッドの上で身じろいで、ふときちんと毛布をかぶっていることに気がついた。

ベッドの上にどさっと身を投げたはずなのに。誰かがかけてくれたということになる。

彬良くん・・・ごめんなさい。毛布のはしを握りしめて、心の中で詫びる。
やるって決めた食事作りさえできなかった。

とりあえず、このカッコウじゃまずい・・・のろのろとベッドから這い出た。
化粧を落としてかるくシャワーだけ浴びた。

リビングのテーブルに『今日はごめんなさい。毛布かけてくれてありがとう』とメモを置いて部屋に戻ると、またどっと疲労が押し寄せてきて、わたしはどろりとした重く暗い眠りに引きずりこまれていった。
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