冷徹社長は溺あま旦那様!? ママになっても丸ごと愛されています
04. ウェディング・ロード


目の前の、ワンピースを着た華奢な美人が"兄"と名乗った混乱が、了を襲ったのが想像できた。だけどそれを表に出すほど、彼は軽率でも無礼でもなかった。

そして忘れてはいけない、なんといっても了は、芸能事務所の社長なのだ。


「はじめまして、狭間了と申します」


瞬時に自分を立て直し、了はきちんと正座をして、カーペットに手をついた。

まこちゃんのほうが「あら」と戸惑っている。


「おっしゃるとおり、僕が恵の父親です。どんな形であっても、この責任は必ずとらせていただきます。これまでご連絡もせず、早織さんひとりにすべてを負わせたことを、お詫びします。本当に申し訳ございません」


深々と頭を下げる。内容も見た目も、じつに誠実で男らしく、美しい謝罪だった。


「……ちゃんとした方じゃない」


まこちゃんが感心したように言う。


「ちゃんとした方よ。社会的には」

「男性的には?」

「このあとの話次第ね。了、顔を上げて、あなたの話を聞かせてよ」


了が少しだけ身体を起こした。説明の糸口を考えているのか、カーペットについた手に視線を落として、じっとしている。

やがて背筋を伸ばし、軽く握った両手を腿の上に置いた。

それから了が語った彼の事情は、私にとって本当に──本当に、驚くべき事柄の連続だった。

< 32 / 149 >

この作品をシェア

pagetop