その花が永遠に咲き続けますように
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制服が夏服に変わり、じめじめとした梅雨もすっかり過ぎた。

ついでに中間テストも終わり、殆どの全校生徒の意識が今、来週の文化祭に向いているだろう。


うちのクラスも、放課後の作業はラストスパートに入っていた。

今も賑やかな教室内で、装飾の準備や衣装の確認等が行われていて、私も自分の机で一人、当日入口に飾る看板の色塗りをしている。


「ちょっとー! 何で私だけこんな格好しなきゃなのー⁉︎」


作業をしていると、教室内から一際大きな声が聞こえてきた。

この、高音でどこかアニメっぽい声は、振り向かなくてもわかる荻原さんの声だ。

チラッとだけ視線を向ければ、彼女がフリルのたくさんついたメイドのような服を着て、クラスメイト達に囲まれていた。

クラスメイト達の会話から察するに、受付係である彼女に、こうやって目立つ格好をさせてたくさんお客さんを入れよう、という目論見らしい。
これじゃあお化け屋敷喫茶というより、メイド喫茶だと勘違いしてやってきそうな男性達が多そうだけれど、荻原さんは小柄で可愛い女の子だから、メイド服はその雰囲気に似合ってると思う。


……と、そんなことを考えていると。



「……看板、上手だね」


不意打ちだったから、反応が数秒遅れた。
顔を上げると、クラスの女の子が二人、私に話し掛けていた。
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