副社長は今日も庇護欲全開です
心が揺れています
彼のその言葉に胸の高鳴りを感じながら、電話を終えると急いで準備をする。

着替えにメイク、それにヘアスタイルを整えて、マンションの外で待っていると、副社長の車が横付けした。

約束どおり一時間半後に来てくれたところに、副社長の誠実さを感じて嬉しくなる。

「お待たせ。乗って」

窓から顔を出し彼は、会社で見るときよりラフな感じがする……と思うのも当たり前か。

服装はスーツではなく私服だし、髪も仕事中の整えられたスタイルから、とても自然な雰囲気に変わっている。

「副社長、昨日も今日も、本当にありがとうございます」

助手席に乗り、シートベルトを締めながら言うと、副社長は小さく首を振った。

「いや、こっちこそ急な誘いだったのにありがとう。私服でも、仕事のときとは随分イメージが違うな。可愛いじゃないか」

「えっ⁉︎ そ、そうですか? ありがとうございます……」

褒められると、どこか恥ずかしい。たしかに、仕事のときはオフィスカジュアルな服装だし、髪も一つに結ぶかハーフアップにしている。

でも今日は、プライベートということもあり、甘めのテイストの服装で、髪は下ろしていた。

そういう部分にも気づいてくれて、しかもさりげなく褒めてくれる。

それは女心をくすぐられるし嬉しいけれど、“可愛い”という言葉をサラリと言う辺り、副社長は女性慣れしているのかなと思い、なぜだかとても複雑だった──。
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