羊と虎
第6章



「凱です」

本社ビルの重役階にある重厚な扉の前に立った凱は、緊張の面持ちでドアをノックした。

「入って」

凱より更に低めの落ち着いた声が返ってきたので、ゆっくりとドアを開けて入室する。

「もう、慣れたか?」

ソファーを勧められて腰を下ろすと、兄、慧も自席からソファーに移動してきた。

「うん。まぁ何とかね・・」

部屋に居る秘書を、何時も凱が来る時は席を外させている事を知っているので、話し方を戻す。

「体調は?」

先日顔色が悪かった事を思い出した慧が聞いて来た。

「もう大丈夫。それで、その事なんだけど、秘書を男性に変えてくれないかな」

「女性じゃダメなのか?」

「みんな最初は真面目に働いてるんだけど、段々態度が変わって来るんだ。
香水の匂いがキツくなったり、ブラウスの前がドンドン開いて来て、ボディタッチが増えて・・・」

思い出して青ざめる凱。
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