溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
キミが教えてくれた
どれくらいの時間、佐々木君の腕の中で泣いていただろうか。涙も落ち着てきた頃、少しだけ離れ彼が私の顔を覗き込んできた。

「落ち着いた?」

問いかけに頷くと、佐々木君は安心した顔を見せ、ゆっくりと私から離れた。

それでもまだ至近距離なのには変わりなくて、ドキドキしてしまう。

「……ん、涙も止まったみたいだな」

そう言うと彼の長い指が躊躇いがちに私の目元に触れた。その瞬間、思わず目をギュッと瞑ってしまう。

けれどすぐに目を開ければ、優しい瞳で私を見つめる佐々木君と目が合い、会ってからの出来事が頭の中を駆け巡った。

私、なにやっているんだろう。突然泣き出して、しかも佐々木君にさっきまで抱きしめられていたよね?

事の重大さに顔が熱くなる。

でもそれと同時にますます確かな気持ちへとなった。私は佐々木君のことが好きなんだって。

こうして今も優しい眼差しを向けてくれる彼のことが、好きなんだ。

自覚して泣いて意識すると、今度は緊張してくる。

あれ、いつも佐々木君と会っていた時、私どんな顔をして話していたんだっけ?

そんなことさえ忘れてしまうほど、ドキドキしている。次第に佐々木君の顔が見られなくなっていく。
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