溺愛診察室~一途な外科医に甘く迫られています~
それに高校時代から彼は大人びていて、物静かな人だったけれどカッコよかったし、モテていた。

そんな人が大人になったらもっとカッコよくなっていて、それこそ引く手あまたなんじゃないかな。

学生の頃を不透明な約束を、大人になった今も忘れられず、相手は忘れていると思いながらもどこかで期待している自分がいる。

もしかしたら彼は、本当に約束を守り、想いを告げにきてくれるかもしれないと。

この歳になると、そんなドラマチックな展開を夢見てしまう。

梅の香りが漂う公園内で静かに瞼を閉じると、今でも鮮明に思い出す。

告白してくれた時の彼の表情、言葉をすべて。

今、あんなストレートな告白をされたら迷いなく返事をしてしまいそう。

「こんな私でよければ、よろしくお願いします」って。

毎年思い出して想像して、思い悩んできた。けれどそれも今年で終わり。

そうしたらいい加減、彼のことは忘れよう。思い出の中でしか知らない彼のことは忘れて、いい加減現実を見ないと。

瞼を開けて大きく深呼吸をし、公園を後にした。
< 4 / 279 >

この作品をシェア

pagetop