社内恋愛狂想曲
もっと何も考えずに気楽に生きているのかと思っていたけれど、奥田さんは奥田さんなりにいろいろ悩んでいるらしい。

今日ここで会って話してみて、ちょっと印象が変わった気がする。

そして私自身も、護との結婚はあり得ないと心の底から思った。

ずいぶん長く話し込んでしまったので、そろそろ店を出ることにした。

奥田さんは財布からこの店のスタンプカードを出して、二人分まとめて会計をしてもいいかと尋ねた。

それでスタンプカードがいっぱいになって次回はフルーツタルトセットが無料になるし、話を聞いてもらったお礼に私の分の飲食代を払いたいと言う。

上司としてさすがにそれはどうかと思うので、気持ちだけありがたく受け取っておいて、自分の分のお金を奥田さんに預けた。

奥田さんはレジで支払いをして、いっぱいになったスタンプカードを嬉しそうに眺めた。

これもまた意外な一面だと思う。

店を出ると奥田さんは深々と頭を下げた。

「ありがとうございました。佐野主任に聞いてもらって少しスッキリしました」

「私も真面目に結婚を考えようって踏ん切りがついて良かった。やっぱりアレだね。なんでも隠しておこうとするのが間違いのもとなのかもね」

「間違いのもと……ですか?」

「だってそうでしょ?堂々と人に言えない関係なんて……ねえ?」


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