社内恋愛狂想曲
私がそんなことを考えているうちに、葉月はついに限界を超えたのか眠くなってしまったようで、頭はユラユラ揺れて、重そうなまぶたは今にもくっついてしまいそうだ。

さすがにこんなところで寝られると困る。

せめて三島課長が来てくれるまではなんとか持ちこたえてもらいたい。

「ちょっと葉月……こんなところで寝ないでよ」

軽く肩をつかんで揺らすと、葉月は頬杖をついて「うん」とうなずいた。

「……あのとき意地張らんとついて行っとけば、今も一緒にいられたんかなぁ……」

葉月はうつむき加減でほんの少し笑みを浮かべながら、穏やかに話す。

ホントに好きだった彼のプロポーズを断ったことを、葉月は今も悔やんでいるんだ。

お節介なのは百も承知だけど、すぐ近くにいるならどうにかして素直な気持ちを伝えることだけでもできないものだろうか。

「ねぇ葉月……今からでも……」

私が最後まで言い終わる前に、葉月は笑って首を横に振った。

「アホやなぁ……今さらそんなん言うたって遅いわ。だからもう忘れる。全部なかったことにするねん」

「……ホントにそれでいいの?後悔しない?」

「さぁ……どうやろ?そんなん後になってみなわからんな……」

今どうすることが葉月にとって一番幸せなのか、それは未来の葉月にしかわからない。

だけどできるなら葉月には、本当に好きな人に愛され求められて、二人で一緒に幸せになって欲しいと心の底から思った。


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