社内恋愛狂想曲
「一晩経ってどうですか?」

「うーん……本人と話したわけでもないし、昨日の今日であまり変わらないよ。いきなり嫌いにはなれない」

現実だとわかっていてもどこかでまだ受け止めきれていないのか、護の浮気は他人事のようにも感じるけれど、やっぱり私は護のことが好きなんだと思う。

好きじゃなければ護の浮気を知って傷ついたり、何も知らずに護との結婚を考えていたことが悔しくて泣いたりはしないはずだ。

「それは橋口先輩と別れたくないから奥田さんから取り返したいってことですか?」

「うん、そう……私が好きになった護を、もう一度だけ信じてみたい」

私がそう答えると、瀧内くんは「やれやれ」と言いたそうな顔をした。

「僕個人としてはやめた方がいいと思うけど……佐野主任がそう思うならしょうがないですね」

「瀧内くんは私みたいなアラサー女の恋愛なんて、ホントは全然興味ないよね。こんなくだらないことに捲き込んでごめんね」

昨日見た護と奥田さんの抱き合う姿がずっと頭から離れなかったせいだろうか。

歳上で可愛いげのない私なんかよりも若くて可愛い奥田さんの方が護とお似合いなんじゃないかとか、考えがだんだん卑屈になっていたのが無意識のうちに表に出てしまった。

< 54 / 1,001 >

この作品をシェア

pagetop