社内恋愛狂想曲
覚悟を決めろ!
始業時間が近付きほとんどの社員が出社してきた頃、パソコンの画面から目を離して顔を上げると、若い女子社員がオフィスの隅で声を潜めて話している姿を目にした。

気のせいか私の方をチラチラ見ている。

私と目が合うと、彼女らは慌てて目をそらした。

一体なんだろうと思って尋ねようとした瞬間に始業のチャイムが鳴り、みんな蜘蛛の子を散らしたように自分の席に着く。

仕事中に問いただすわけにもいかず、気にしないようにして仕事に取り掛かった。


忙しく仕事をしているうちに時間は過ぎ、あっという間に昼休みになった。

コンビニで買ってきたおにぎりを食べながら午後の仕事の段取りを考えていると、そういえば朝のヒソヒソ話はなんだったのかと思い出す。

一体何を話していたんだろう?

私には噂されるようなことをした覚えがないので、いくら考えても答えは見つからない。

やっぱり気のせいかなと思いながら昼食を終えて、コーヒーを飲みながらひと息ついていると、オフィスの入り口で葉月が手招きして私を呼んだ。

葉月がわざわざ私に会いに来るなんて珍しい。

立ち上がってそばに行くと、葉月は私の手を引いて廊下の端まで連れていく。

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