社内恋愛狂想曲
一瞬、幼児と乳飲み子を抱えて親の介護をする白髪混じりの自分の姿が脳裏をよぎった。

笑えない未来を想像してしまい、思わず身震いする。

「そんなわけで電話でも言ったけど、お母さんの知り合いがお見合いのお世話をしてるんだけどね……」

これは非常にまずい展開だ。

押しの強い母のことだから、このまま私を言いくるめて首を縦に振らせる気なのだろう。

今からお見合い写真を撮りに行こうとでも言い出しそうな勢いの母をなんとかなだめるためにも、結婚の予定はなくても相手がいそうな雰囲気だけは出しておいた方が良さそうだ。

母の言葉を右から左へ聞き流しながら頭をフル回転させて言い訳を考える。

「私も結婚とか将来のこと考えてないわけじゃないよ。だけど私が一人で決められることでもないし、仕事のこととかタイミングもあるから、なかなかね……」

「あんただっていつまでも若くはないんだからね。付き合ってる人がいるなら今後のことをちゃんと話し合って、一度家に連れてきて紹介しなさい」

「うん……そのうち……」

久しぶりに泊まって帰ろうかと思ったが、これでは私の身がもたない。

タイミング良く遊びに来た兄家族のおかげでなんとか母の小言を逃れ、ちゃっかり夕飯だけいただいて早々に実家を出た。



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