社内恋愛狂想曲
こんな調子で男女問わず気軽に声をかけるから、伊藤くんのまわりには常に人がいるように思う。

ただの同僚としてなら楽しくていいかも知れないけれど、これが彼氏なら浮気が心配でしょうがないだろう。

過去にどんな噂が立とうが私にとって伊藤くんはただの仲の良い同期だし、伊藤くんにとっての私も多分そうだと思うからなんの問題もないのだけど。

「まぁ……少しくらいなら付き合ってあげてもいいけど」

「よし決まり、早速行こう。ここの駅前に餃子のうまい店があるんだ」

伊藤くんは私の意見も聞かず嬉々として歩きだした。

伊藤くんが私を口説こうとしてるとか、瀧内くんから変な話を聞いて少し警戒した方がいいのかもと思っていたけど、いかにも伊藤くんらしくてなんだか安心した。

二人で飲もうと餃子の美味しい店に誘われる私は、伊藤くんに女性としてまったく意識されてはいないようだ。

伊藤くんは店に入ると餃子を2人前と油淋鶏、チャーシュー麺と炒飯、そして生ビールを2つジョッキで注文した。

細いわりによく食べるのは変わっていないらしい。

まずは乾杯をして生ビールを喉に流し込む。

「一緒に飲むの久しぶりだなぁ。何年ぶりだっけ?」

「伊藤くんが異動になる前だから、3年くらいかな」

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