正しい『玉の輿』の乗り方
1 最悪なお見合い

【12月1日(土)午前11時。
サクラーシュホテル1階ラウンジ 
青いネクタイの男性 社長の息子!】

そんなメモを握りしめ、私、綾野菜子(あやのなこ)はホテルのロビーを走っていた。

大事なお見合いの席に30分も遅刻してしまったのだ。
しかも、こんな時に限って携帯は充電切れ。

とにかく1分1秒でも早く行かなければ、『玉の輿』のチャンスを逃してしまう。

私はラウンジの入口を目指して猛ダッシュをかけた。

けれどその瞬間、段差に足が躓いて、じゅうたんの上で思いきり転んでしまった。

「イタタタ」

何やってるのよ……私。
痛みを堪えながら床に手をつくと、目の前に男性の手が差し出された。

「大丈夫ですか?」

見上げれば、驚くほどのイケメンが私を心配そうに見つめている。

「す、すみません。ありがとうございます。ラウンジにお見合い相手を待たせていて……ちょっと急いでいたもので」

私は差し出された手をとって立ち上がった。
すると、彼はハッとした表情でこう尋ねてきた。

「お見合い? あの……もしかしてあなたは『あやの』さんですか?」

「えっ……はい。そうですけど」

「でしたら。あなたのお見合い相手は私ですよ」

イケメンの彼はにっこり笑ってそう言ったのだ。

「え……」

うそ!?
彼がお見合い相手なの!?
確かに青いネクタイはしてるけど。

私は半信半疑で彼の顔を見つめた。

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