正しい『玉の輿』の乗り方
9 親友の苦悩~東吾side~
「東吾! おまえ何で黙ってたんだよ! ツーイーストの社長のこと」
社長室で書類の整理をしていると、樹が凄い剣幕で怒鳴り込んできた。
まったく。
彼女には特別な感情なんて無いって言ったくせにな。
おまえは言ってることとやってることが滅茶苦茶なんだよ。
心の中で悪態をつきながら顔をあげる。
「ああ、確かに昨日、ツーイーストの社長が彼女のことを口説いてたな。でも、遅かれ早かれ彼女に紹介してやるつもりだったんだろ? 手間が省けて良かったじゃないか」
「それは、あいつに何の問題もなかったらの話だ!」
樹の目は血走っていた。
分かりやすい男だ。
まあ、自分の愛する女が他の男にちょかいを出されたのだから、こうなるのも無理ないか。
「はいはい。だから俺が阻止してやったんだろ? 遊ばれて捨てられたんじゃ、その後の婚活にも差し障るしな。まあ、ツーイーストの社長のことは任せとけ。俺がきっちり調べてやるから。それで何も問題がなければちゃんと紹介してやれよ」
樹の肩をポンと叩くと、恨めしそうな目で睨んできた。
「いや、もうあいつのことはいいよ。もう少しまともな奴を探すから」
樹はもっともらしくため息をつく。
どうせ誰のことも紹介するつもりなんてないんだろうけれど。
「ふーん。まあ、いいよ。おまえが結婚さえ放り出さなければな」
俺は容赦なく釘を刺す。
さすがに気の毒に思うけれど、これが社長から託された俺の任務なのだ。