5章 招かざる客


丸宮珈琲店からの帰り道。

まだ部長からの電話にぼんやりとしていた。

少し緊張した部長の声は、いつもと違っていた。

来週の日曜日迎えに行く?

何度思い出しても顔が熱くなって、胸が騒いだ。

あまりにぼんやりしていて、どこをどう歩いて駅まで来たのかわからない。

電車に乗る前にバッグの中のスマホが振るえているのにふと気付いた。

見慣れない番号。

誰だろう?

改札の前で電話に出た。

『俺、わかる?』

新手のオレオレ詐欺??私はまだ若いぞ!

急に気を引き締める。

「どちら様でしょうか?」

『あれー、もう俺の番号消しちゃってんだ』

「はい?」

ってことは、以前の知り合い?

俺、って軽いノリで電話かけてくる相手といえばあいつしかいない。

大学時代、やたら私に声をかけてきて、しつこくつきまとってきていた難波 亮だ。

「難波くん?」

『なんだー覚えてるんじゃん。焦ったー』

相変わらず軽いノリに、ため息が出た。

この亮という男は私より二つ上で、家が医者家系で病院も経営しているという生粋のお坊ちゃん。

何一つ不自由なく暮らし、お金で買えないものは何もないと思っている私とは真逆の人生を歩んできた人間だ。

何度も「付き合って」と言われたけれど、そのたびに笑ってはぐらかしていた。

だけど、きちんと振ったわけじゃないから、彼にとったら単にはぐらかされてるだけで嫌われてはいないと思っていたらしく、随分長いこと電話がかかってきていた。

新しいスマホに変える時に、思い切って彼のアドレスを削除したんだっけ。

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