クールな次期社長と愛されオフィス
部長は顔を上げてこちらを見ると、優しく微笑む。

あれ以来、部長の笑顔がとても優しく感じられるのは気のせい?

助手席に乗るように促され、私は急いで部長の横に乗った。

やっぱり亮の車より部長の車の方が香りもいいし、イスの形もずっと体にフィットしていた。

なんといっても世界で数台の高級車だもんね。

「あの、これからどこへ?」

部長の横顔に尋ねる。

「まぁ、じきわかるさ」

笑顔は優しくなったけどこの口調は相変わらずだと思いつつ、逆に今はこんな風に無愛想な方が緊張がほぐれた。

「堂島」

高速に乗ってしばらく走らせたあたりでふいに名前を呼ばれる。

「はい」

「お前の髪はいつもそうやって後ろにくくっているけど、何か意味はあるのか?」

「意味は特にないですけど。ただ、後ろに束ねた方が仕事の時は邪魔にならないので」

「今日はお前にとっては仕事か?」

「い、いえ、仕事ではないと思っていますが・・・・・・?」

それもあまり自信がなかったけれど、どうしてそんなことを聞いてくるのか部長の真意が分からない。

「仕事じゃないときは髪を下ろしてみろ」

そんなことを言う部長に驚いて目を丸くした。

「ど、どうしてでしょうか」

「ん?仕事の時と同じ髪型じゃなんだか堅苦しい。普段のラフな堂島と今は一緒にいたい」

なんだろう。

そんなこと男性に言われたのも初めてだし、しかも部長から言われるなんて。

せっかく蓋をしていた気持ちが簡単にその蓋を開けられてしまった。

抑え込んでいた胸のドキドキが加速し始める

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