クールな次期社長と愛されオフィス
その扉から現れたのはコーヒーカップを片手に持った部長だった。

部長は白いシャツにジーパンという普段見慣れないラフな格好で、少し開いた胸元に目がいってしまい思わずうつむく。

っていうか、どうなってるの?!

恥ずかしがってる場合じゃないよね?

再び、部長の顔を見上げた。

「おはよう、よく寝れた?」

部長はわずかに口元を緩め、私のベッドに近づいてきた。

そして、私の足下に座りコーヒーを一口飲む。

「す、すみません!」

顔がかーっと熱くなって、私はベッドから慌てて抜け出し部長の前に立ち上がった。

胸がドクンドクン激しく脈打っている。

部長はそんな慌てた私を見ながらも余裕の笑みで見つめていた。

「お前はいつも謝ってばかりだな。口癖みたいになってるぞ」

「そんな、冗談いってる場合ではなく、これは一体?今何時なんですか?」

半ばパニックに陥ってる私を前に、部長はサイドテーブルにコーヒーカップを置くと足を組み替えて微笑む。

部長の話はこうだった。

料亭を出て車に乗せた途端私が気を失うように寝てしまい、何度か起こすも全く起きる気配がなくしょうがなく自分の家につれて帰ったと。

「少し揺り動かしたくらいじゃ目が覚めない状態だった。ちなみに今は夕方の6時だ。4時間も気を失うように寝るなんて、朝早くから夜遅くまで働き過ぎなんじゃないか?」

4時間も眠りこけてたの?

「ご迷惑おかけしました!」

状況がようやく飲み込めてきた私はもう一度深々と頭を下げた。

一刻も早く帰らなくちゃ。

部長の家にお邪魔してベッドで眠りこけたりなんかして、こんなの秘書として非常識すぎる!

ベッド脇に置かれた自分のバッグを腕にかけると、急いで部屋を出て行こうとした。

その時、私の腕がぎゅっと強く掴まれる。




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