記憶の一粒
**❶**

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目を開けたら目の前は白い天井
消毒の匂いと、ズキズキと痛む頭
ここは・・・どこだろう。
「七瀬さん?気がついた?」
チラッと横に目をやれば、雰囲気の柔らかい白衣を着たお兄さん。
「ここがどこかわかる?」
「・・・病院?」
まぁ、そんな白衣を着た人が隣にいる時点で病院であることは間違いなくて。
「そうそう、七瀬さんね、三日間も寝てたんだよ。どお?体だるいでしょ。」
三日間も寝てたの・・・?なんでこんなことになってんの?
体を起こそうとしても三日間も寝てたからそう簡単には言うことをきいてはくれなくて、
「あ、ダメだよ今は無理しないで。君、マンションの屋上から飛び降りたんだから。」
「え・・・私がですか?」
「落ちた所が幸い花壇のやわらかい土の部分だったから助かったけど、コンクリートだったら即死だったよ?」
「・・・私が自分から?」
「覚えてないのかい?何人も目撃者がいる中で君は自殺をはかったんだよ」
私が自殺を?自殺する理由なんて全然ないのに・・・。
「頭を少し強く打ってるけど命に別状なし。右の足首は折れてるから全治2、3ヶ月ね。あとはー・・・精神科の治療かな。」
「あの、私本当に自殺したんですか?」
「目撃者がそう言ってるからね。」
「でも、自殺する理由なんて・・・」
ズキッ・・・こめかみが少し傷んだ。
「・・・とりあえず、しばらくは入院だから安静にね。あ、僕七瀬さんの担当医の安達大貴です。まぁ気軽に大ちゃんって呼んでね。」
じゃあ今日はもうおやすみ。
そう言って大ちゃんは病室を出ていった。
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