理系教授の秘密は甘々のはじまり

二人きりのおでかけ

一日目の学会。

午前中は"臨床における新薬の効果"に関する発表を中心に聴講した。

お昼は、お弁当を食べながら講義も聴くことのできるランチョンセミナーに参加した。

午後は医薬品の展示やポスターセッションを見てまわった。

学会はとても勉強になる。それは間違いないが、発表となると別だ。

"明日は緊張して聴講どころではないだろうな"

波実は、ボンヤリと目の前のポスタースライドを眺めていた。

「H大の方ですか?もしかして葉山教授の教え子?」

「どうしてわかるんですか?」

波実が不思議そうな顔をすると、男性は波実の名札を指差した。

「あ、そうか。そうですね。院生2年の鈴木といいます」

波実はクスクスっと笑った。

学会では、学会参加費を払った人物を見分けるためにも、所属施設名と名前を記載した名札の着用を義務付けられているのだ。

「僕は、京都K大の坂本です。葉山教授の論文にはいつも刺激を受けていて、明日の講演も楽しみにしているんですよ。そういえば、明日、お宅の早島さんが演題発表するんですよね?」

坂本は、人の良さそうな好青年だ。

「いえ、それが、早島が別件で急に来られなくなって、私が代打で発表することに,,,」

「口説はポスターよりも緊張しますよね。僕も聴講しますから、頑張って下さい」

そうして波実は坂本と名刺を交換してその場を離れた。

本日の学会はこれで終わりと抄録に書いてあった。
もうすぐ17時になろうとしている。
< 10 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop