理系教授の秘密は甘々のはじまり

教授の本性

波実が首にかけたタオルで髪から落ちてくる滴と汗を拭ってくると、明らかに軽そうな30代の男性二人が近寄ってきた。

男性二人は、波実の座っているソファの両サイドに腰かけると

「お姉さん、一人?友達待ってるの?お風呂上がりで凄く色っぽいね」

波実は怪訝そうな顔をすると、ソファから立ち上がろうとしたが、両サイドから腕をとられもう一度座らされる。

「逃げなくてもいいじゃん。これから一緒に観光に行こうよ。お友だちも誘ってさ」

周囲にいる親子連れやおじさんは、哀れみの目を向けるものの助けてはくれない。

「あの、私,,,」

「誰と観光に行くって?」

後方からドスの効いた低い声が聞こえてきた。お風呂上がりの真澄は紺色の浴衣を着て、男の色気を撒き散らしている。

いやいや、波実の連れと出かけるというなら真澄が該当するということ。男に誘われて怒っているのだろうか?

「殴られる前にその手を離せよ」

真澄の眼力は鋭く今にも相手を射ぬいてしまいそうなほどに光っている。そして、素早く男二人の手を払いのけた。

「イヤ、俺達はただ,,,」

「失せろ。品のない客はこの宿には不似合いだ」

男達はライダースーツを来ており、温泉目的のためだけに訪れているのが一目でわかる。

お客の一人が、絡まれている波実を心配して女将と支配人を呼んでくれたようで、すかさず仲介に入ってくれた。

男性二人は波実に謝罪すると、支配人に連れられてロビーの方へ消えていった。

「お嬢さん、ごめんなさいね。あの二人、ロビーをスルーして勝手に大浴場に入ってきたみたいで。いつもはこんなこと絶対にないんだけど」

「大丈夫です。ちょっと触られただけですから」

「大丈夫じゃない。ベタベタ触りやがって。マジで殴ってやればよかった」

真澄の言葉に波実は大きく首を振った。

「本気じゃなかったと思うしからかわれただけですよ」

「そんなわけあるか!そんな色っぽい格好して無自覚か?」

真澄の隣で美鈴がクスクスと笑っている。

「ごめんなさい。真澄があんまりにもいつもと違うから」

「笑い事じゃない」

波実は肩身が狭いと感じながらも、ふと、周囲の人に注目を浴びていることに気づいてしまった。

「真澄さん、私もう部屋に戻ります」

「ああ、そうしよう」

「真澄さんは女将さんとゆっくりしてきてください」

波実はそういうと、着替えをいれた袋を抱えてその場を駆け出した。
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