愛してるのに愛せない。
第Ⅲ章
あの日の夜、竜王とキスを交わした日、竜王は、名前で呼ぶように私に言った。

「咲。それが俺の名前。」

「咲・・・。」

「そうだ。これからは、そう呼べ。」

そう言うと、私の携帯を奪い、連絡先を登録した。

「何かあれば、俺か、こいつらから連絡する。」

そのあと、私はボーッとしたまま家に帰った。

つまり私は、姉の身代わりとなったのだ。
姉を重ねてみている咲を分かりながら、咲を苦しめると分かっていながら、自分の欲を満たすためだけに、それを受けれてしまったのだ。

「・・・最低だ・・・。」

溜息を吐く。
でも、咲だって同じことしているのだもんね。
なんて自分だけじゃないと言い聞かせていると、携帯のメール通知が鳴った。

『10分後駅。』

それだけの短いメールだった。

「駅に来いってことか・・・。」

そう理解した私は、急いで用意をすると、駅まで走る。
駅に着くと、咲は、バイクにい寄りかかりながら、待っていた。

「行くぞ。」

そう言って、ヘルメットを渡される。
黙って被り、後ろに乗ると、咲はゆっくりとバイクを走らせる。

「・・・・。」

咲の腰に腕を回すのは少し気が引けたので、咲のベルトを掴む。
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