愛してるのに愛せない。
第Ⅳ章
次の日、倉庫に行くと早速良助くんが話かけてくれた。
それを見た海斗さんは、良かったね。と微笑んでくれた。

「だーかーらー!!違うってば!!」

「言われた通りにやってるんだけど!?」

今は怪我をした良助くんの代わりに、良助くんのバイクの整備をしている。

「それじゃ、まだ緩いんだってば!!」

「これ以上締まりませんけど!?」

ボルトを締める作業に手間取っている私と、自分の思い通りに動かない私にイラつく良助くん。そのやり取りをちらちら見ながら、自分のバイクの整備をしている人や、遠巻きに笑いながら見ている人がいる。

「こう!体重乗せて!」

「これ以上乗らないってば!!」

そんなやり取りをし始めてからもうすぐ5分が過ぎようとしていた頃。

「何の騒ぎだ。」

静かに発せられた低い声。
振り返れば、咲が見下ろしていた。

「あ。すみません!」

良助くんは、すぐに立ち上がって咲に頭を下げる。
私はそんな二人を無視して、ボルト回しに専念する。

「ふんっ・・・!!!」

いくら力をいれてもびくともしない。
でも、これじゃまだ緩いと言う良助くん。
こんなに固いのに・・・。

頑張る私の手が咲によって離された。

「お前じゃ無理だ。」

耳元で咲の声が聞こえる。
後ろから抱きしめられるような形になった。
思わず、ドキッとした。
咲は、あんなに固いボルトを意図も簡単にグッときつく締めた。

「すご・・・。」

思わず洩れた声。
咲を見上げると、意外にも近くにあった顔。

きれいな顔・・・・。

そう思いながら、じっと見つめていると、咲の口から

「・・・小百合・・・。」

ぼそっと零れた名前。
きっと私にしか聞こえなかった。
私は思わず固まってしまった。
そうだ・・・咲にとって私は、姉の代理でしかない。

はっとした咲に、私は笑いかけた。

「さすがだね!私の締め方じゃダメだね!」

そう言って笑う私を見てから、咲はまた上へと戻って行った。

調子に乗るから、苦しくなるんだ。

「やっと終わった!」

「お疲れ。」

そう言って隣に座る良助くん。
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