時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
色のない心


「またあなたか、しつこいな」


翌日もアメリはカールを連れてケプラーのもとへ行ったが、冷たくあしらわれる。


「何といおうと、あなたの要望を叶えることはできません。お帰りください」


冷えた漆黒の瞳で睨まれれば、凄味がある。顔立ちが整っているから、冷徹さはなおさらのことだった。


その翌日も、そのまた翌日も、同じことが続いた。






「アメリ様。あの占術師にどういった要件があるのか知りませんが、もう無理でしょう。あの男は偏屈なうえに、意志が強そうだ。いくらあなたが必死に通ったところで、考えを変えることはないでしょう」


ケプラーのもとに行くようになって五日目、ついにカールがアメリに不安げな声を掛ける。


反論しようにも、アメリは言葉を思いつかない。


ケプラーの拒絶はもっともだ。先祖が書いた予言の書を改ざんしろという、無茶を要求しているのだから。しつこく粘っても、無理なものは無理なのかもしれない。


だがアメリには、一つ気がかりなことがあった。







ケプラーは、”愛”を頑なに否定した。予言の書を改ざんすることよりも、運命を変えるほどの愛の存在を、忌み嫌っているように感じた。


そのことが胸の奥に引っかかって、離れないのだ。




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