冷酷な王さまは愛し方を知らない
level 1

舞踏会



ここはイリア王国の王都。
私が生まれた国、私が育った町。



そして私リズは、その王都にある小さなお花屋さんで働いている。



「いらっしゃい!」



開けた扉から入ってきた人に声をかける。



「やあリズ。今日も一段と可愛いね」

「やだ、ゼスおじさん。おじさんも素敵よ」

「そんな事言ってくれるのは、リズだけだよ」




おじさんはそう言いながら店内をぐるっと見渡した。




「サーシャさんなら、もうすぐ戻って来られますよ」

「ああ、すまないね」




サーシャさんとは、この花屋の店主。
リズおじさんの娘さんだ。
おじさんは近くに住んでいて、時々こうして顔を見にやってくる。



「そう言えばリズ。最近また大きな戦があったみたいだな」

「ええ。そうですね」




この国は栄えているけれど、国同士の争いが絶えない。
私たち国民が巻き込まれることはほとんどないけれど、この王都が戦場になることがないとは言い切れないから少し怖い。


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