冷酷な王さまは愛し方を知らない

初恋のはじまりとおしまい






花の色も花の匂いにも、何一つ興味などなかった。
きっと。
お前に会うまでは。






――・・・―――・・・―――・・・




「アルさま、リズさまを自室の方へ移動された方が…」

「ここでいい」



治療を終えたリズを自分の部屋のベッドに連れてきた俺に、キースが進言する。
しかし、俺はそれに首を縦に振ることはしない。

俺を庇って傷を受け倒れたリズ。
苦しそうな呼吸。
ベッドに横になり固く瞳を閉じている様をじっと見つめる。



「こちらに食事を運びますので、どうか少しは食事をとってください」

「……」



俺を心配しての言葉だが、俺は素直に聞くことなんてできない。
俺の胸を支配するのは、後悔と絶望。

一命を取り留めたリズ。
だがまだ目を覚ますことがない。

痛々しい傷跡を目の当たりにし、女の体に傷をつけてしまった事への後悔が押し寄せる。




< 100 / 413 >

この作品をシェア

pagetop