冷酷な王さまは愛し方を知らない
level 3

元の生活



元の生活に戻って1か月。
それはとてもあっという間だった。

私は花屋に戻り、サーシャさんも寛容に迎えてくれた。
私がまた働き出したことに、常連の皆様もとても暖かく声をかけてくださり、私の居場所はやはりここなのだと感じる。



「でも、王宮での暮らしなんて、経験できるものでもないし、選ばれなかったにしてもいい経験よね」

「…はい」



サーシャさんは私が帰ってきてから何度もそれを言う。



「王さまにもお会いしたんでしょう?どうだった?噂通りの冷酷人間だった?」

「いいえ。人想いのお優しい方でした」



不器用で、口下手で、孤独な王さま。
でも、きっと心根はお優しい方。

私が差し上げた花を大切に飾ってくれるお方だもの。
そして、あの花もとても大事に育てられているのがわかった。


もっと早く知りたかった。
そして、アルさまともっとたくさんお話がしたかった。




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