冷酷な王さまは愛し方を知らない

それぞれの願い



「…サーシャさんが?」



しばらく歩いたところに用意されていた馬車に乗り込み、キースさんと王都を目指す中、私はなぜあそこにアルさまがいたのかキースさんから聞かされていた。
コールド王国の出陣が伝えられ、挙兵した騎士団は王都を抜け戦場に向かおうとしていた。

その騎士団の団長であるクリスさんの元に、血相を変えたサーシャさんが駆け寄り告げたのだという。
私が買いつけに行っているのだと。
もしかしたら巻き込まれているかもしれないから助けてほしいと。


その報せをきいたアルさまは急遽王宮からキースさんを呼び寄せともに戦場に向かい私を発見したのだという。
私を無事に保護できた後、すぐ王都まで連れ戻すことがアルさまや騎士団には出来ないため、キースさんが呼ばれたのだと聞かされた。



「私のために…」



私一人の命のため、アルさまが動いてくださったという事…?
国民の手前、無下にすることができなかったのだろうか。



「アルさまを、恐ろしいと思いましたか」

「え…」

「何のためらいもなく、敵国の兵士を斬り捨てたアルさまを恐ろしいと思いましたか?」



怖ろしいと……。
私は何と答えたらいいのだろう。



< 140 / 413 >

この作品をシェア

pagetop